7、実を避けて虚を撃つ。
孫子曰く。「その兵の形は水に象る。水の形は高きを避けて低きに赴く。兵の形は実を避けて虚を撃つ。水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝を制す。故に兵に常勢なく、水に常形なし。よく散によりて変化し、而して勝を取る者、これを神と謂う。故に五行に常勝なく、四時に常位なく、日に短長あり、月に死生あり。」
【解説】
孫子曰く。「そもそも、兵の態勢とは水のようなものである。水は高きを避け低きに流れていく。兵の態勢は実をさけて虚を撃つ。水は地形により流れを変え、用兵は敵に合わせて変化する事で勝ちを制する。故に用兵に常に決まったやり方は無く、水に常に決まった形は無い。
敵に合わせて良く変化し(散っては集まる)、当然のように勝利する様を神業と言うのである。故に陰陽五行に常に優位なものはなく、季節は巡り、それに応じて日の長さも変わり、月が満ち欠けするのと同様である。」
10万の大軍をイメージして欲しい。それを上から眺めた時、まるで水のようだと言っている。水は普段は静かだが、一度氾濫すれば全てを壊す力を持っている。水は地形にそって流れを変え、地形の弱い処を壊しながら流れていく。優れた用兵も斯くの如し。軍は普段は静かだが、一度攻めに転じれば一気呵成に敵を葬る勢いを持つ。敵の態勢に合わせて良く変化し、敵の守りの薄い処から食い破っていく。
とは言え、実際は難しい作業となる。地形は動かないが、相手の守りの堅い場所は此方に合わせて動く。相手が有能ならば、守りの堅い場所だけを攻めさせられる事にもなる。そのため、守りの薄い場所を的確に捉え攻撃できる事は、高いレベルの指揮官である事の証明となるのだ。故に、難なく当然のようにこなせる様を、人は神がかりと言うのである。神がかり的な用兵を上から眺めれば、まるで濁流が堤防の弱い処を食い破るように、敵の実を避けて虚を撃つ。上善は水の如しである。
世を見渡してみれば、陰陽5行に絶対優位はなく、木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は火を生じる。季節も春夏秋冬と巡るし、季節の巡るのに合わせ日照時間も変わる。空では、月も満ち欠けをしながら巡っているではないか。この世のものは変化するのである。用兵も同様となろう。
孫子の言う「実を避けて虚を撃つ」は、ある種の冷徹な教えとなる。言い替えれば「どんな組織や人間でも弱点はある。その弱点を迷わずにつきなさい。」と言う事だ。そのためには、兎にも角にも相手を知る事。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」とセットにして抑えておきたい。
仕事で考えて見よう。よく中小企業は大企業に勝てないと思っている人がいるが、本当にそうだろうか?その常識を疑って欲しい。そもそも良い会社とは何か?それは利益の大きな会社である。この大前提を忘れてはいけない。孫子に言わせれば、「幾ら兵が多かろうと、それは勝利には何ら益しない。」という事だ。
大企業はその分コストがかかっている。中小企業より社員の待遇も良いし、人数が多い分運転資金もかかる。操縦を間違えば途端に潰れて身売りする羽目になる。よくよく考えて見れば、コストの低い中小企業の方が有利な面があるのである。利益とは売上からコストを引いた余りであるのだから、コストの低い中小企業は相当に有利なのである。(勿論、大企業が有利な面もある)
良い会社とは利益の上がる会社。そういう視点で会社を評価しなおして見れば、今まで違う視点で会社を見れるのでは無いだろうか?その上で実を避けて虚を撃つのだ。大企業にだって、必ず弱点はある。勝敗は兵の数では無く、戦う前の準備で決まる事を肝に銘じたい。大企業に勝てないのは、一重に準備不足なのだ。この考え方こそが、孫子の兵法である。
----- 以下、余談 -----
陰陽五行説について
http://www.geocities.jp/mishimagoyomi/inyo5gyo/inyo5gyo.htm
孫子曰く。「その兵の形は水に象る。水の形は高きを避けて低きに赴く。兵の形は実を避けて虚を撃つ。水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝を制す。故に兵に常勢なく、水に常形なし。よく散によりて変化し、而して勝を取る者、これを神と謂う。故に五行に常勝なく、四時に常位なく、日に短長あり、月に死生あり。」
【解説】
孫子曰く。「そもそも、兵の態勢とは水のようなものである。水は高きを避け低きに流れていく。兵の態勢は実をさけて虚を撃つ。水は地形により流れを変え、用兵は敵に合わせて変化する事で勝ちを制する。故に用兵に常に決まったやり方は無く、水に常に決まった形は無い。
敵に合わせて良く変化し(散っては集まる)、当然のように勝利する様を神業と言うのである。故に陰陽五行に常に優位なものはなく、季節は巡り、それに応じて日の長さも変わり、月が満ち欠けするのと同様である。」
10万の大軍をイメージして欲しい。それを上から眺めた時、まるで水のようだと言っている。水は普段は静かだが、一度氾濫すれば全てを壊す力を持っている。水は地形にそって流れを変え、地形の弱い処を壊しながら流れていく。優れた用兵も斯くの如し。軍は普段は静かだが、一度攻めに転じれば一気呵成に敵を葬る勢いを持つ。敵の態勢に合わせて良く変化し、敵の守りの薄い処から食い破っていく。
とは言え、実際は難しい作業となる。地形は動かないが、相手の守りの堅い場所は此方に合わせて動く。相手が有能ならば、守りの堅い場所だけを攻めさせられる事にもなる。そのため、守りの薄い場所を的確に捉え攻撃できる事は、高いレベルの指揮官である事の証明となるのだ。故に、難なく当然のようにこなせる様を、人は神がかりと言うのである。神がかり的な用兵を上から眺めれば、まるで濁流が堤防の弱い処を食い破るように、敵の実を避けて虚を撃つ。上善は水の如しである。
世を見渡してみれば、陰陽5行に絶対優位はなく、木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は火を生じる。季節も春夏秋冬と巡るし、季節の巡るのに合わせ日照時間も変わる。空では、月も満ち欠けをしながら巡っているではないか。この世のものは変化するのである。用兵も同様となろう。
孫子の言う「実を避けて虚を撃つ」は、ある種の冷徹な教えとなる。言い替えれば「どんな組織や人間でも弱点はある。その弱点を迷わずにつきなさい。」と言う事だ。そのためには、兎にも角にも相手を知る事。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」とセットにして抑えておきたい。
仕事で考えて見よう。よく中小企業は大企業に勝てないと思っている人がいるが、本当にそうだろうか?その常識を疑って欲しい。そもそも良い会社とは何か?それは利益の大きな会社である。この大前提を忘れてはいけない。孫子に言わせれば、「幾ら兵が多かろうと、それは勝利には何ら益しない。」という事だ。
大企業はその分コストがかかっている。中小企業より社員の待遇も良いし、人数が多い分運転資金もかかる。操縦を間違えば途端に潰れて身売りする羽目になる。よくよく考えて見れば、コストの低い中小企業の方が有利な面があるのである。利益とは売上からコストを引いた余りであるのだから、コストの低い中小企業は相当に有利なのである。(勿論、大企業が有利な面もある)
----- 以下、余談 -----
陰陽五行説について
http://www.geocities.jp/mishimagoyomi/inyo5gyo/inyo5gyo.htm
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