2017年9月14日木曜日

孫子の兵法 謀功編その3

4、勝算がなければ戦わない。

孫子曰く。

  • 10倍の兵力ならば、包囲する。
  • 5倍の兵力ならば、攻撃する。
  • 2倍の兵力ならば、分断する。
  • 互角の兵力ならば、勇戦する。
  • 劣勢の兵力ならば、退却する。
  • 勝算がなければ、戦わない。


この目安で、孫子は判断していたようだ。戦わずして勝つことに重きを置く孫子であるから、劣勢なら退却する事、勝算が無ければ戦わない事が特に大切となる。

日本でも逃げるが勝ちと言うが、逃げる事は恥ずかしい事では無い。戦国武将の例をとって見ても、徳川家康だって逃げの名人だったし、織田信長だって逃げの名人であった。有名な武将は逃げるのも上手いものなのだ。勝負事は最後に勝つ事が大事だ。意地をはらずに状況を見るのが良いだろう。死んでしまっては意味がないのだから。

また孫子は攻撃をするタイミングで5倍と言っているが、これは現在のアメリカと北朝鮮の姿にも見て取れる。アメリカは圧倒的飽和攻撃によって、反撃を許さない攻撃を考えていると言われる。孫子はこれを5倍の兵力と言っているのである。孫子はその性格上、5倍用意して攻めると言うのではなく、5倍という状況を利用し外交による勝利を目指す事だろう。これもアメリカの対話と圧力に見て取れる。アメリカの行動は孫子の兵法からも妥当なのである。

仕事で考えて見よう。日本では石の上にも3年と言ったり、逃げない事を尊ぶ傾向がある気がする。勿論、それはそれで素晴らしい価値観なのだが、逃げる事は悪い事と決めつけてしまうのは良くない。どんな人間も100戦して100勝とはいかない。ならば、負けた時どう損害を少なくするかも極めて大切なのである。逃げるが勝ちとは良く言ったもので、名人と呼ばれる方は逃げるのも上手いものである。逃げてはいけないと単純に考えてしまっては、自分の選択肢を狭めるだけなので注意して欲しい。

そして、より大切となるのは、逃げた後にそれを前向きにとらえられるようにする事だ。逃げた事を心の傷として落ち込んでしまってはいけない。逃げた事を良い経験を得たと前向きにとらえられるなら、逃げる事は悪い事ですら無いと知っておきたい。シェイクスピアは、世の中に良いものも悪いものもなく、それを決めているのは自分だと言ったが、この話を参考にして逃げる事への意識を変えてはどうだろうか?逃げる事が悪いのは、貴方がそう考えているから。それ以上でもそれ以下でも無いのである。



5、君主の口出しについて

結論から言うと、孫子は軍への君主の口出しは害悪で自殺行為と考えていたようだ。君主を補佐するために将軍がいる。君主と君主が良い関係を築ければ国は栄えるが、関係が乱れれば国は弱体化してしまう。君主たる者は自らの行為に注意を払わねばならない。なお、孫子が指摘するミスは3つある。

  1. 進べきでない時に進軍を命令し、退くべきでない時に退却を命じる。
  2. 軍の指揮系統を無視して命令し、軍に不信の種をまく。
  3. 軍内部の事情も知らずに、軍に口出しをし軍を混乱させる。


軍事の素人である君主が、軍事に口を出せばどうなるかは想像に容易い。自分より知恵のある者の前では話すべからずの格言を胸に刻みたい。王は自分より優秀だから雇っているくらいの気持ちで構えているのが、将軍も信頼されている事を実感し、結果として国が安定する事だろう。

この点でもアメリカはしっかりやっている。アメリカのトランプ大統領は国防はマティス長官に任せているという。アメリカ経営学の基本は、部下に権限の委譲をして、部下のやる気を引き出す事だと思うため、有能なアメリカ人経営者でもある彼はその通りやっているだけかも知れないが、孫子の兵法からしても正しい事は知っておきたい。

なお、この話を逆から考えると、攻める糸口となる。君主と将軍の関係が強固なものになるほど国が安定するのだから、攻める時は君主と将軍を離反させれば良い事になる。君主が軍に口出しをすれば軍が弱体化するのなら、君主の虚栄心をうまく刺激することで軍に口出しをさせるのが良い。孫子は戦争の学問のため、両面からどうぞ。

仕事でも、部下を信頼し任せる事はとても大切だ。心配で部下に口をだしてしまう経営者の方もいるだろうが、考えても見て欲しい。自分が口をだしていられるのは、会社の規模が小さいからだ。会社の規模が大きくなるにつれ、部下に仕事を委任しなければならない。松下幸之助も生前、自分の仕事は祈る事くらいと言っていた。だからこそ、部下がやる気になり尊敬されたのである。




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