2017年9月20日水曜日

孫子の兵法 兵勢編その2

2、戦いは奇をもって勝つ。

孫子曰く。「およそ戦いは正をもって対し、奇をもって勝つ。奇を得意とする将軍の戦い方は、終わりなきこと天地の如し。尽きぬこと大河の如し。終わりて始まること月日の如し。死してまた生ずること四季の如し。」

正とは正攻法など一般的の事であり、奇とは奇襲攻撃や遊撃部隊など特殊な事の総称である。「戦いは奇をもって勝つ」のイメージのつかない方は、例えば、正面の敵と戦っている最中、いきなり後ろから斬られた事を想像して欲しい。どう思うだろうか?混乱して、一瞬でも正面の敵との闘いに集中できなくなるだろう。その隙に恐らくは正面の敵にも斬られる。単純にはこういうイメージだ。こう言った状況を軍単位で作り出す事を、奇と言っている。

およそ戦いというものは、相手の予想を外す事で勝利を得られやすい。考えてもみて欲しい。一般的な兵法は、将軍ならば皆知っている。これは逆に言えば、将軍は相手がどう攻めてくるかも把握している事になるため、その対応もしっかりされているのが普通だ。

軍の力に大きな差があり、大人と子供のような差があるならいざ知らず、相手も自分と同程度の実力はあるとすれば、相手の防御を正面から切って落とすのは難しい。出来ても、被害も相当でるためコストの視点からも好ましい作戦とも言えない。そこで、相手の予想を裏切る奇が大切になる。予想できる範囲は備える事ができるが、予想できない事までは備える事は出来ない。命のやり取りの最中、予想できない奇によって大きな損害を被ったりすれば、相手の心は乱れよう。

予想できぬが故に相手もミスをしやすくなり、何をやってくるか分からないと考えてしまうと、人は精神的に追い込まれていくのである。そして、精神的に余裕がなくなるからこそ、通常しないミスをし始める。よって、大よその戦いは奇によって勝つのである。

将棋の羽生善治の言葉を借りれば、戦いは他力本願である。相手が崩れぬことには勝つ事もままならぬ。その崩れはミスから生じるのだから、相手のミスを誘発させる奇はとても大事である。孫子が不敗の態勢は築けるが、必勝の態勢は作れぬと言っていた事を思い出して欲しい。






奇正の話という事で、今回は型破りと型無しの話をしよう。良く型破りという言葉を誤解している人がいる。新しい事を試す事が、型破りと誤解している輩だ。しかし、型のしっかり定まっていない人が、どう型を破るというのだろうか?型破りとは、出来上がった型を破るものであり、型を作らない事では無い。人と違ければ良いというのは、型なしと言うのである。

例えば、会社に入ったら、先ずは先輩の言う事をしっかり守る。まずはその会社の文化をしっかり身につけなければならない。それがこの場合の型だ。この型ができあがってこそ、一人前となり型を破るチャンスが回ってくるのである。新人の方は努々忘れぬようにすると良いだろう。何せ、そのほうが可愛がられる。

と、基本が大切と戒める話を書いたが、奇正についても同じである。奇によって勝つと言われると、奇ばかり考える人がいるだろう。だが、しっかりした正があるからこそ、相手は正に気をはらい奇が入る余地が生じるのである。しっかりとした正が無いなら、相手に奇の入る余地は生まれない。奇をてらうという言葉はいい意味で使われるだろうか?そう言う事である。正があればこそ奇、奇があればこそ正。どちららも大切なのである。

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