2017年9月12日火曜日

孫子の兵法 作戦編その2

3、智将は敵を食む。

知恵のある将は敵の物資も利用するという事。戦争では補給物資の輸送が大変だ。路が長くなれば敵に狙われやすくなるし、それを守るために兵も必要となる。かと言って、補給しなければ前線の兵は戦えない。戦争における補給は最も重要な部類のテーマなのだ。

その補給で最も理想的となる手段は何だろうか?それは敵の物資を利用する事である。自軍のコストは大幅に減り、加えて相手は大きな無駄をした事になるのだから一石二鳥と言える。だからこそ、智将は敵の物資も利用できないか思慮すると、孫子は言うのである。彼曰く、敵地で得た米1升は、輸送して補給する米20升に相当するそうだ。人件費や襲われて失うリスクなどを考えれば、補給が如何にコストかはイメージしやすいだろう。

補給を戦争として考えた場合、補給路を断つ事は戦争に勝つ有効な手段になる。補給の失敗は前線の部隊の士気に影響を与えるし、補給されないのでは撤退も考慮しなければならない。兵と兵が銃撃戦をする事を戦争と思いがちだが、それは戦争の一つの形態にすぎず、補給を主眼に置いた戦い方もあると知っておきたい。

なお、敵に物資を利用されるくらいなら、逃げる時に物資を使えなくするのも一つの手となる。装備なら壊しておくとか、使った時に暴発するように仕組んでおくとか、食料には毒を含ませるとか。敵の物資を得たからと喜んでいると、そこに罠が仕込まれていたりする可能性は高いため、注意されたし。

ビジネスで言えば、M&Aなどをイメージしても良いかも知れない。何かを始める時、全て一からやる必要は無い。すでにある会社を買い、その会社の持つのれんを始めとした資源を利用するのも手である。

これは少し違うかも知れないが、特許をオープンにする手がある。自分のいる業界を大きくしたい時、何も一人で頑張るだけが能では無い。独占は美味しい状態だが、小さな業界で独占したほうが良いか、大きな業界にしてシェア5割もったほうが利益がでるかは検討の価値があるのだ。シャープの創業者である早川徳次などは、人に真似される商品を作れと言っているくらいだ。競合相手の力を利用する事で、てこの原理というやり方も知っておきたい。



4、勝ってますます強くなる。

勝って弱くなっては仕方ない。勝つ事でますます強くなるよう心がけよと言う話。信賞必罰は武門のよって立つところだが、何故かと言えば、それが分かりやすいからである。兵は見返りを求める。手柄を立てても見返りがないのなら、命をかけてくれる兵などいなくなるのは道理だ。手柄を立てれば報われるからこそ、兵はやる気になり命を懸けて戦ってくれるのである。

罰も大事だ。軍規違反を罰しなければ、誰も言う事を聞かなくなってしまう。戦場では命が懸かるのだから、軍規違反も正せないようでは、戦場で兵が逃げだし作戦どころの話ではなくなる。軍を弱体化させないためには、賞と罰が車の両輪ようのようなものなのだ。

また、敵軍の処遇も大事だ。敵はすべて殺すというのも一つの手であるが、出来れば味方に併合したほうが良い。有能な得難い指揮官なら猶更である。豊臣秀吉などは、織田信長に斬られそうになった武将をわざと逃がし、後で自分の軍の武将として迎え入れたという逸話が残っているくらいだ。戦争は勝って終わりでは無い。勝てば次の戦争への準備が始まるだけであり、平和は戦争と戦争の合間の休息に過ぎないという現実を確認しておきたい。

なお、勝ってますます強くするように心がけるのは、勝つ事で生じる慢心を制御する意味合いでも押さえて欲しい。人間が一番ミスしやすいのは、慢心して油断している時である。気が抜けて普段なら考えられないミスが生じたりする。日本でも勝って兜の緒を締めよという言葉があるが、勝ったと思った時が一番危ない時間帯という意味でも思い返しておきたい。

ビジネスで言えば、会社に適正な評価基準が備わっているか見返したい。軍で信賞必罰が尊ばれるのは、それが軍にとって適正な評価基準だからである。人が一所懸命と頑張るのは、それが報われるからであり、この当たり前を無視して組織は成立しえない。必ずや離職率となって現れる事だろう。

特に最近は、上司は部下に好かれないといけないと言われる。昔の部下は仕事だからと言えば黙ってついてきたものだが、今はそうはいかない。一度嫌われると、この会社はブラックと言って他社に行ってしまうのだ。せっかく育てた部下に辞められては掛けたコストが全く無駄になるのだから、上司には部下に嫌われない努力が求められるのだが、結局これは部下を正当に評価しろという部分がある。

会社組織の都合上、特に上から2割の利益をあげてくれる社員の評価はとても大事で、少なくとも其処から不満がでないように心がけるのは経営者の大きな仕事の一つとなる。常日頃から褒めて評価し、お金や地位で報いるようなシステムを構築したい。会社を発展させるには社員の力が欠かせないのだから、人材から人財へ認識を変え、社員に喜ばれる会社づくりをしていきたい。

社員に喜ばれる会社と言う意味では、アメリカのサウスウエスト航空が手本になるかも知れない。決して給料が高い会社では無いが、入社希望者は絶える事が無く、ずっと黒字の素晴らしい会社である。参考までに。





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