2017年9月24日日曜日

孫子の兵法 兵勢編その6

6、勢に求めて人に責めず。

孫子曰く。「善く戦う者は、勢いに求めて人に責めず。故に善く人を択び勢に任ず。勢に任ずる者の闘いは、その人を戦わしむるは木石を転がすが如し。木石の性は、安ならば静、危ならば動、方ならば止、円ならば行。故に善く戦わしむるの勢、円石の千仭の山を転がるが如きは、勢なり。」


【解説】

戦上手は、戦いの帰趨は勢いで決まる事を良く知っていて、個人に過度の期待をしたりはしない。故にしっかり人選をした上で適材適所を心がけ、万全の態勢をもって何時でも勢いをだせる状態を作り上げる。勢いの重要さを知っている者の用兵は、まるで木石を転がす如し。平地では静かであるし、傾斜では動き出す。木石が角ばっているなら止まるし、円いなら転がる。戦上手はその状況に合わせ軍を自在に操り、ひとたび攻めに転じるならば、その勢いは円い石が千仭の山を転がすが如くなる。これを勢と言うのである。




上の画像は千仭の山だ。孫子の言う勢は、この山から円い石を落とすが如しという事になる。凄い勢いを言っている事がイメージできるだろう。石は円ければ勢いを出すのに役立つが、角があるなら止まるのに役立つ。要は使いようである。用兵もかくのごとし。AにはAに、BにはBに適したやり方というものがある。戦上手とは、その時々に適したやり方を選べる者を言い、適材適所で万全の態勢を築ける者を言うのだ。万全の態勢で相手を待ち、チャンスが来たら一気呵成に攻めあげる。さすれば、敵の被害の甚大な事この上ないのである。

孫子は「勢に求めて人に責めず」と言っているが、少人数の闘いならいざ知らず、10万対10万の闘いである。個より全体の流れに重きを置くのは当然である。日本刀も斬れるのは3人限界説が唱えられる事があるが、それと同じでどんな強い人間も、個では数に対抗できない。ならば集団としての勢に求める他、勝機はあるまいと言っている。

仕事で言うなら、会社全体のモチベーションが勢だ。会社全体のモチベーションの高低で、自ずと会社の業績も変わってくる。孫子の提言どおり、適材適所に人材を割り当て、その上で万全の態勢を整えるのが良いだろう。

とは言え、何も特別な事は必要ない。具体的には、自分の近くの人に気持ちよく働いてもらうにはどうしたら良いか考えるだけだ。どんな人間も本気で面倒みれるのは、良い処10人だ。会社全体のモチベーションと言っても、どんな立場でも出来る事は自分の近くの人間の世話をする事くらいな事には触れて置く。

会社全体だからと、自分と直接は接した事のない人ばかり気にする人がいるが、接した事のない人は名前すら知らないだろう。自分の部下も満足してないのに、名前も知らない接した事もない人を満足させることが出来ようか。貴方の周りの部下が満足して働けるようになると、その部下も貴方がやってくれたように自分の部下に接するものである。そうすると、部下の部下も、また同じようにその部下に接してくれる。こうして会社全体のモチベーションが醸成されていくのだ。

自分の回りの人間は、仕事に楽しみを見出しているだろうか?それが結局は全体のモチベーションにつながって行く事を意識したい。商売の基本は、昔も今も目の前の客に喜んでもらう事と言われるが、つまりそう言う事である。

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