2017年9月12日火曜日

孫子の兵法 謀攻編

1、百戦百勝は、善の善なるものに非ず。

そのまま訳せば、百戦して百勝よりも素晴らしい事があると言っている。孫子は戦わずして勝つ事を尊ぶ人物であるから、つまり戦ってしまった事自体が善とは言わないという事だろう。百戦百勝は一見すると素晴らしいが、次負けないとも限らない。無敗を貫きたければ、戦わない事こそ肝要だ。我戦わず。ゆえに負ける事なし。屁理屈のようだが、これは真実にして嘘では無い。

とは言え、現実の敵は攻めてくるわけで、全く戦わないのも現実では無理がある。自分が戦わなければ平和になるのなら、人類の歴史が戦争で彩られていないだろうし、イジメだってなくなるだろう。現実では今この時も戦争は行われているわけで、イジメも行われている。では、孫子は何と言わんとしているのか?どうしたら戦わぬ故に負けることなしができると言うのか?その答えは、戦火を交える前に勝利する事にあると言うのである。

孫子が言うには、敵と相対する時はまず知恵を以って勝ち、知恵で無理なら軍による威圧による勝ちを狙い、それでも無理なら人脈から相手に戦争のデメリットを刷り込んで勝つ。それでも無理なときに戦火を交えるのだ。あらゆる戦いは戦う前に勝敗が決っしている事を肝に銘じるべし。この視点に立てば、百戦百勝と言うが、百戦した事自体が褒められた事では無いという事になるわけだ。

ビジネスの例を紹介しよう。最近は自動運転という言葉を耳にするようになり、アメリカではすでに自動運転の車が走っている地域があるわけだが、この自動運転が自動車業界の姿を変える事になる。今までは車と言えば車メーカー同士の闘いだったわけだが、これにグーグルが参戦してきたのだ。自動運転を現実に行うには、交通のルールと言うか、自動運転をつかさどる共通のシステムが必要となる。このシステムをグーグルが担おうとしているのだ。

今トヨタはグーグルと提携し自動運転を進めているようだが、これはグーグルの下にトヨタが入る事を意味する。検索企業であったグーグルは、今や世界の自動車業界自体を傘下におさめつつあるというイメージを掴んで欲しい。これからはグーグルにそっぽを向かれて自動運転の車の販売はできなくなりつつあるわけで、自動車メーカーはグーグルにライセンス料を支払って、自動車販売するようになっていくと見られる。

まだ自動運転システムは実験の段階だが、2050年には世界的に自動運転になると見られている。このまま行けば、2050年に自動車メーカーを支配するのはグーグルになっているかも知れない。これを孫子は知恵によって勝てと言っているのである。知恵によって勝てるならば、あとは相手がどう動こうと大勢に影響は与えない。グーグルの例を参考にして欲しい。

この例に限らず、日本企業は下流でのみ頑張る傾向があると言われる。上流で勝敗が決してしまうのに、日本企業は何故か上流にこない傾向があるのだ。実際はこの揶揄も多少無理があり、軍事力がない日本がどうやって上流に行けばいいのか、アメリカが上流で戦っていられるのは軍事力があるからという部分を見逃して論じているわけだが、今のままなら日本に頼らないと良い物は作れないとまで腕を磨くのも良いかも知れない。その国の軍事力が企業経営に影響を与える事も、孫子の兵法という事で触れて置く。幾ら理屈を言っても、最後は拳固で終わり。それだけの話である。





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