2017年11月24日金曜日

孫子の兵法 用間編その3

(その2の続き)

その4、反間(はんかん)

反間とは、敵方が送り込んできたスパイを、反って此方のスパイとして利用してしまう事を言う。要は2重スパイである。スパイである事には気づかないふりをして利用する場合もあるし、スパイにきづいてる事を伝えて利用する場合もあるだろう。何方にせよ、優秀なスパイは2重スパイなものである。

スパイは機密性の高い情報を得られるほど腕が良いスパイとなるが、実際どうしたら機密性の情報を得られるだろうか?情報は機密性が高くなるほど、限られた人間しかアクセスできない。その情報を得たかったら、よほどの信頼を勝ちとる必要がある。という訳で必要になってくるのが、敵国の情報である。

例えば、敵の動きをピタリと教えてくれる人がいたらどうだろうか?それも一度ではなく、2度、3度とピタリと当てる。こう言う事が続くと段々と信頼関係が作られ、この人は私達の国を助けてくれるとなるわけだ。しかし、そうそう他の国の動きをピタリと当てられるもので無い。敵だって警戒しているし、情報を制限して工作も仕掛けている。それを全て看破してピタリと当てるとしたら、恐らくは敵のスパイなのである。敵のスパイだから敵の動きを知っている。こう考えたほうが単純明快なのである。

そのため、良い情報をくれるスパイは2重スパイの疑いがでるものなのである。こう考えて見ると、反間を通して国同士がキツネと狸の化かし合いをしているのが国際関係となるかも知れない。と、ここまで郷間、内間、死間、反間と説明してきたが、まだ肝心な部分が足りない。それは誰が本国との連絡役となるかである。どんな情報も本国に伝わらねば意味が無い。だから、本国との連絡役が担う人が必要となり、これを生間と言う。




その5、生間(せいかん)

生間とは、敵国に潜入し情報を得て、本国に生きて持ち帰るスパイを言う。一般に想像しやすいスパイの形では無いだろうか?スパイ映画などお馴染みの潜入捜査は、基本的に生間だろう。昔は俳句で有名な松尾芭蕉がスパイだったように、旅芸人であるとか、行商人などが調度この手のスパイだったと思われる。ふらっと訪れて、色々情報を得て本国に報告していたのだ。世界中にいるジャーナリストは、孫子の時代ならば生間と呼ばれていたかも知れない。

生間の各間者と本国のパイプ役としての役目は、とても大切となる。






今回はどんな人間が優秀なスパイとなるのかという話を紹介しよう。スパイ業界のリクルートも大変なもので、スパイとして雇った人が本当に一生懸命働いてくれるかは分からないそうだ。スパイになる事を了承したは言え、自分の所属する団体に唾をはくわけだし、良心から気乗りしないのが普通の人なのである。何せ自分の宿り木となる組織が潰れたら、自分だって困るのだ。当然ながらスパイ活動を適当に胡麻かす人が多くなる。

だが、そんな中やたら一生懸命にスパイ活動に勤しむ人種がいるのだ。それは所謂エリート層に多いと言われる。自分は優秀なのに活躍の場が与えられないとか、待遇に不満があるとか思っている時に、例えば敵国のエージェントが近寄ってきて言うのである。貴方の能力でこんな待遇は可笑しいと。私の国なら貴方に存分の活躍の場を提供するので、是非とも私ども力を貸してもらえないだろうか?と。

こうして優れたスパイが出来上がるのである。こういった層のスパイは、自分に低い評価をした組織に忠誠心というものは無い。そればかりか、自分を認めてくれた敵国に喜々として情報を提供するのである。孫子の時代も、こうやって勧誘していたのかと思うと面白い。



---- 以下、余談 ----

各間者の役割は特に限定はされないと思うが、説明の便宜上つなげて書いている。

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