2017年11月27日月曜日

孫子の兵法 用間編その7

5、上智をもって間となす

孫子曰く。「昔、殷の興るや、伊摯、夏に在り。周の興るや、呂牙、殷に在り。故にただ明主賢将のみよく上智を以って間となす者にして、必ず大功をなす。これ兵の要にして、三軍の恃みて動くところなり。」



【解説」

孫子曰く。「昔、殷の国が勢力を増してきた時(興)、伊摯は夏の国にいた(在)。周の国の勢力が増してきたとき(興)、呂牙は殷の国にいた(在)。故に聡明な君主や賢明な将のみが、伊摯や呂牙のごとき智恵(上智)をもつ者を起用でき(間)、必ず大きな成功を収めるのである。これこそ用兵の要にして、三軍が信頼(恃)して動く道標となる。」







古代中国において伊摯、呂牙はともに名宰相と呼ばれた人物である。実際は神話の域のようで出自を怪しむ声もあるようだが、孫子が言いたい事はこうだ。伊摯は夏王に命を狙われる経験から夏王の暴君ぶりを実感していたし、夏王朝の事情に詳しかった。その伊摯を重用すればこそ、夏王朝を滅ぼす事ができたと。呂牙(太公望)は殷に仕えていたが、王が無道であることに失望し去った経験がある。その呂牙を重用したから、殷を滅ぼすに至るのだと。

こういった敵国の事情に詳しい者を宰相に据えられるのが、名君や賢明な将の間となる。間と言うと、基本的には実行部隊をさす。だが、君主や将軍に間と言う字を当てはめるなら、それは敵国の事情に通じた者に実権を与える事となる。伊摯や呂牙のごとき智恵をもつ者が腕を振るえば、大きな成果があがるのは当然なのだから。これぞ兵の要であり、軍の拠り所とするべきものである。




---- 以下、余談 ----

現代でも新しい分野に進出事したい時は、ヘッドハンティングで人材を確保したり、その分野に詳しい者をアドバイザーとして雇ったりする。長らく続いていた定年退職した技術者による海外への技術流出が、日本でもようやく問題視しされ始めているが、これも孫子の兵法どおりと言える。日本はもはや技術先進国とは言えない。ものづくり日本というキャッチフレーズに酔う事なく、日本はもう先進諸国の技術を追う側にいる事を認識しなければならない。孫子のしたたかさを学ぶべきかも知れない。

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