2019年12月3日火曜日

里仁 第四 23

【口語訳23】

訳文を2つ示す。

1、孔子先生がおっしゃった。つつましくして、失敗する者は少ない。

2、孔子先生がおっしゃった。貧困なれば、それ以上失うものは無い。




【解説】

1、つつましくして、失敗する者は少ない。

陽徳よりは陰徳が良く、有償よりは無償の愛が好ましいように、思いやりも慎ましさの中にあってこそ気持ちが純粋に伝わりやすい。逆に思いやりを無遠慮に行うなら、厚かましいと思われるかも知れないし、巧言令色などの誤解をうけるかも知れない。他人の為と書いて偽と言うくらいだから。と言うの訳で、仁の人を志すならば、つつましさを身につけると良い。また、博打で財を成した者がいないように、派手な生活を好む者は借金などで困窮する場合が多い。一方、地味なようだが、つつましい人間が破綻したという話は聞かない。金銭的な面に注目しても、確かにつつましい人間は失敗が少ない。

なお、中国人は博打好きと聞くので、孔子は博打ばかり打ってると金は貯まらないと諭したのかも知れない。



2、貧困なれば、それ以上失うものは無い。

貧困にあっては、卑屈にならず、盗みを働かず。卑屈な人間には近寄り難い。盗みを働く人間では油断できない。だから、この手の人間に甘んじていては良い出会いは訪れず運は向いてこない。だから、貧困にあればこそ、ただ己の人格を磨く事に専念する。そう腹をくくった時、貧困は最良の先生となる。貧困は、お金の大切さを身に染みるほど教えてくれる。人の嫌な部分を散々見せて、世間の厳しさを教えてくれる。そして、どの種の人間が信用でき、どの種の人間が信用できないか体験させてくれ、人を見る目を養ってくれる。もしこれら艱難辛苦に負けず人格を磨けたなら、徳器は成就し、必ずや人生を変える出会いを引き寄せるだろう。

なお、これらは程度の差こそあれ、誰しものが人生の何処かで味わう苦い経験となる。それ故、出世してから教わっては上手くないとも言える。地位や豊かな生活を犠牲にするかも知れないから。だが、貧困の時に経験するならば失うものは無い。貧困で良かったという事もあるのである。出世すれば、嫌でもしがらみがつきまとう。しがらみを考えなくて良い貧困にあるからこそ、自由に伸びやかに人格を磨けるのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿