2017年10月6日金曜日

孫子の兵法 軍争編その3

3、兵は詐を以って立つ

孫子曰く。「故に諸侯の謀を知らざる者は、予め交わること能わず。山林、険阻、沮沢の形を知らざる者は、軍を行ること能わず。郷導を用いざる者は、地の利を得ること能わず。故に兵は詐を以って立ち、利を以って動き、分合を以って変をなす者なり。」



【解説】

(迂直の計を用いるとして)

孫子曰く。「したがって、諸外国(侯)の謀を知らない者は、予め外交交渉をする事はできない。山林、険しい場所(険阻)、水が邪魔になる場所(阻沢)の形を知らない者は、軍を指揮する事はできない。スパイ(郷道)を用いざる者は、地の利を得る事もできない。軍と言うのは、騙し合い(詐)から始まり、利を求めて動き、分かれたり合わさったり(分合)を繰り返して変化する性質を持つのである。」






軍争を勝つためには迂直の計が大切になる事は先述したとおり。では、実際にどうしたら迂直の計ができるだろうか?こういう話だと思えば良い。結論から言えば、まずは情報を集めよと、孫子は説いている。

考えてもみて欲しい。一言にある国と戦争すると言っても、他の諸外国がその隙に攻めてこないだろうか?傍観してくれるだろうか?これは大きな問題となる。戦争には勝ったが、他の国に攻められて亡国では意味がない。軍争以前の問題として、諸外国の状況を担保しなければ戦争は出来ないのである。

では、どうしたら良いだろう?当然、戦争する前に同盟関係を含め諸外国と交渉する、若しくは諸外国を戦争している場合ではない状況に追い込むという答えになる。そのためには、諸外国の状況を良く知り、人脈も作っておく必要があるのだから、「諸侯の謀を知らぬ者に、予め交わる事は能わず」と孫子は逆で説明しているのだ。また、戦争はあくまで政治の一部なのだから、諸外国の政治上の都合を良く知る事で、相手の軍の狙いも透けて見えてくる。狙いが分かれば、相手を利で釣る事も容易くなる。迂直の計は相手を利で釣るわけだから、こういった情報はとても大切なのだ。

次の説明に入る。まず考えて欲しい事がある。自分の小さな子供が1人で遠くへ行くとき、貴方は何を言うだろうか?孫子もこれと同じ事を言っている。さて、実際に戦地に行く事をイメージして欲しい。戦地に行くのだから、戦地にいくまでの道は整備されているのか?そもそも道はあるのか?山や川はどうだ?時間はどれくらいかかりそうだ?こう言った地理上の事は気になるだろう。

山林、崖などの険しい場所の有無、湿地や川など水が行軍の邪魔となる場所の有無を知らないと、行き当たりばったりになる。遊びならそれも良いが、それで戦地に敵より早く到着するのは無理があるのだから、予め知っておけと言っているのだ。

そして、戦地で地の利を得ようにも、その土地の事に詳しい者がいなくては難しい。これも例えば、引っ越したばかりの時をイメージすれば良い。新居に入ったら、まずは何処に何の店があるのか散歩しながら見たりするはず。要はそんな右も左も分からないのに、地の利も何も無いと言う話だ。だから、戦地では郷道と呼ばれる土地に詳しい者から情報を得て、地の利を得るよう動きなさいと言っているのである。

このように、戦争とは相手を騙す事によって始まり、利を求めて動き、分かれたり合わさったり変化を繰り返す性質があるのだ。利にならない事を進んでする人間もいないのだから、利を求めて動くのは良いとして、最後に分合の部分の説明をしておく。諸外国は自分の利益のために同盟を結んだり、同盟を破棄したりするだろう。実際戦う時を見ても、一部の部隊だけ先行させたり、もしくは少なくなった部隊を他の部隊に吸収させたり、状況に応じて陣形は変化していく。これを孫子は分合と言っているのである。

仕事で考えて見よう。仕事も下準備が大切だ。どれくらい大切かと言えば、下準備が仕事の8割と思って良いのでは無いだろうか?例えば、料理だ。素人が料理でイメージするのは、強火のなか鍋を豪快に振ってる姿となるが、実際はそれで味が決まってるわけでは無い。具は何にして、大きさはどれくらいで切ったのか?下味はついているか?こういった火にくべる前の作業こそが味をきめるのである。鍋を振ると派手だが、焼く時は鍋と接する時間が多いほど焼ける。特に家庭用の弱い火力では、実際は鍋は降らないほうが良いのである。

下準備をしっかりして、誰がやってもできる状態にしてから仕事に入る。おおよそ仕事のコツはこれである。孫子は兵法書という事で、下準備を「詐によって立つ」と騙す事を焦点にして説明しているだ。仕事は下準備で決まる事を思い返したい。

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