2017年10月27日金曜日

孫子の兵法 行軍編その5

5、辞の卑くして備えを益す者は進むなり

孫子曰く。「辞の卑くして備えを益すは、進むなり。辞彊くして進駆するは、退くなり。軽車先ず出でて其の側に居るは、陳するなり。約なくして和を請うは、謀なり。奔走して兵車を陳ぬるは、期するなり。半進半退するは、誘うなり。」



【解説】

孫子曰く。「言葉(辞)が卑屈なのに備えを増強(益)しているなら、進撃する気である。言葉(辞)が強(彊)く進撃(進駆)するそぶりを見せるなら、退却する気である。軽戦車が先に出て軍の側面を警護して居るなら、陣容を整えている(陳)のだ。互いの取り決め(約)もなく突然に和平を請うなら、謀である。奔走しながら兵や車の陣容を整える(陳)なら、攻める目星(期)がついたのだ。進んだり後退したり(半進半退)を繰り返すなら、誘いだそうとしている。」





孫子の用心深さをうかがえる一節だと思う。敵の使いの言葉が丁寧で低姿勢であっても、備えを増強しているなら進撃を疑う。敵の使いの言葉が高圧的で騎兵なりが駆けるそぶりを見せても、退却の可能性を疑う。言われて見ないと、なかなか気づけない事では無いだろうか?それぞれ考えて見よう。



1、敵の姿勢が低姿勢で、備えを増強している。

要は言行一致の問題であろう。敵の言葉と実際の行動が一致しないなら、言葉を鵜呑みにしてならない。例えば、敵があからさまに野戦用の城を作り始めながら、戦う気は無いと言ってきた事を想像して欲しい。この狸と思わないか?つまり、そういう事を孫子は言っている。



2、敵の姿勢が高圧的で、騎兵で威嚇してきた。

恐らく「弱い犬ほど良く吠える」の格言を言ってるのだろう。故・山本五十六も「強い犬は吠えない」と言っている。敵が使いをよこしてまで高圧的に出ざる得ないのは、戦いたくない気持ちの現れである。敵の使いの気持になってみて欲しい。敵陣で高圧的にでれば殺される事もあるのに、高圧的に出ざる得ない。その心は、決死の覚悟で退却の時間を稼いでいる可能性が高いわけだ。敵は戦えないからこその賭けだと、孫子は言うのである。



孫子の経験値の高さが透けて見える教えだと思う。その他にも、軽戦車が側面に着いた時は陣容を整える可能性が高いし、敵と相対している時に前触れもなく突然に和平の申し込みがあれば、謀略を疑ったほうが良いと指摘している。また、陣容を整える動きが盛んなら敵の戦意をうかがえるし、敵軍が出たり下がったりを繰り返せば、何か罠があると見たほうが良いと。敵の行動には裏があるという事を、懇切丁寧に説いているのだろう。

最近の時事から、北朝鮮情勢について考えて見よう。孫子は敵の高圧的な交渉が退却を目指している可能性があると指摘している。アメリカと北朝鮮の関係を考えた時、興味深いでは無いか?と言うのも、今アメリカは北朝鮮に攻め入る可能性が何時になく高まっている。早ければ今年中の会戦だし、そうでなくとも来年は攻め入ると言う予想がでている。これは北朝鮮から見れば、高圧的な交渉に見えよう。

ただ、アメリカにはお金の問題がある。先月のハリケーン被害を復興させるのに10兆弱はかかると見られているし、アフガニスタンも撤退では無く増兵なのだからコストは増すばかり。本当に戦争できるのだろうか?本音を言えば、戦いたくないはずだろう。トランプ大統領は本当に難しい選択を迫られているのだ。孫子の言う通り、確かに退却の可能性が高まっていると言えるかも知れない。



---- 以下、余談 ----

こういった理由から、アメリカ対北朝鮮と言うよりは、アメリカは空爆だけして中国がメインの戦争になると言う予想もある。何方かと言えば、中国こそ本筋かも知れない。国際政治は一寸先は闇と言われるため、全く違う事になるやも知れないが。


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