2019年11月23日土曜日

里仁 第四 19

【口語訳19】

孔子先生がおっしゃった。父母の存命中は、遠くへ遊びに出かけてはいけない。仮に出かけるにしても、必ず行く先は告げる事だ。



【解説】

子の年齢によって多少のニュアンスの変化がありそうだが、総論で言えば、子が遠くへ遊びにいけば親は心配する。行く先すら分からないなら、親の心配は如何ほどのものになるか。その親心を察っせれないようでは、とても孝子とは言えないというアドバイスとなろう。孝の根本は、親に心配をかけまいとする心の有り方にある。だから、遠くへ遊びに行ってはいけないと単に言葉通り理解してはいけない。寝ても醒めても子の帰りを心配する親心に心を配るならば、とても遠くへ遊びに行けるはずが無いという順番で理解したほうが良い。そう考えるなら、行先を伝えずに遠出するなど論外だと分かる。特に中国人の場合、現代でも世界中に中華系の出稼ぎ労働者がいるように、歴史的に遠くへ出稼ぎに出かける事も苦にしない傾向がある。また、治安も良いとは言えず、特に子共は誘拐される危険性もある。この辺の事情に孔子は心を痛めたのかも知れない。

なお、他の解釈として、遠くに遊びに行っている内に両親に何かあれば申し訳が立たない、もしくは遠出している間は両親の世話ができないからとも考えられるが、やはり上記のように心の有り方を軸に解釈するのが筋だろう。君子なれば道理を抑えるべし。




【参考】

中国と日本では多少文化の違いがあると思うが、親心を理解するに最適な「感恩の歌」を紹介する。




感恩の歌      竹内浦次 作

あわれ同胞心せよ  山より高き父の恩
海より深き母の恩  知るこそ道の始めなれ

児を守る母のまめやかに  わが懐中を寝床とし
かよわき腕を枕とし    骨身を削る哀れさよ

美しかりし若妻も  幼児一人育つれば
花の顔いつしかに  衰えゆくこそ悲しけれ

身を切る如き雪の夜も  骨さす霜のあかつきも
乾ける処に子を廻し   湿れる処に己れ伏す

幼きものの頑是なく   懐中汚し背をぬらす
不浄をいとう色もなく  洗うも日々に幾度ぞ

己は寒さに凍えつつ   着たるを脱ぎて子を包み
甘きは吐きて子に与え  苦きは自ら食うなり

幼児乳をふくむこと    百八十斛を越すとかや
まことに父母の恵みこそ  天の極まりなき如し

若し子の遠く行くあらば  帰りてその面みるまでは
出ても入りても子を憶い  寝ても覚めても子を念う

髪くしけずり顔ぬぐい  衣を求めて帯を買い
美しきもの子に与え   古きを父母は選ぶなり

己れの生あるそのうちは  子の身にかわらんこと思う
己れ死にゆくその後は   子の身を護らんこと願う

よる年波の重なりて  いつか頭の霜しろく
衰えませる父母を   仰げば落つる涙かな

ああ有難き父の恩  子は如何にして酬ゆべき
ああ有難き母の恩  子は如何にして報ずべき

はえば立て立てば歩めの親心 わが身につもる老いをわすれて

世を救う御代の仏の心にも似たるは親の心なりけり




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