2019年7月23日火曜日

里仁 第四 2

【口語訳2】

孔子先生がおっしゃった。不仁な者を久しく貧乏にしておくべきでない。かと言って豊かな生活を長く続けさせるべきでもない。だが同様の状況にあっても、仁の者は仁を以って安らぎ、知ある者は仁たらんと精進するものだ。



【解説】

不仁な者は思いやりが無い者の意味で、つまり利己的の人間の事だ。利己的な人間は基本的にろくなことにならない。欲が強いためで、欲は結局自分の身をも焦がし始めるが、利己的な人間はその事に気付くことは少ない。事は貴賤の問題では無い。利己的な人間は貴賤どちらの状況に置かれても、自分の欲の強さで失敗するのである。例えば貧しい時分には、盗みを働いてはばからず恥とも思わない。例えば豊かな時分には、驕り高ぶり知らず知らずの内に周りに敵を作りながらの生活になる。盗みを働いたり、周りに敵を作り続ければどうなるか?結局は、自分の蒔いた種を自分で刈り取る時が来るのである。そうなっては可愛そうだと思えば、不仁な者を久しく貧乏にしておくべきでなく、かと言って豊かな生活を長く続けさせるべきでもない理由も納得がいく。こう考えてあげるのが人としての思いやりなのである。そして、人としての思いやりを学ばせるのだ。

では、何故思いやりが大切かになるが、端的に言えば、その者の価値観が変わるからである。欲深い時は特に金にばかり目が行きやすいが、お金よりも思いやりの方が大切だと知れば、日々を思いやりを軸にして生きるようになる。そうなると、お金にあまり意識がいかなくなるため、貴賤にとらわれる事なく日々を安らかに生きられるようになるのである。故に、仁の人は仁を以って安らぐとなる。そして、この道理に通じている事が知恵本来の意味である。お金のある無しはある程度は努力の結果だが、大金と言う意味では貴賤は天が決めるもの。要は、単なる運だ。ならばお金の事を考えて暮らしても仕方が無い。この道理を知るならば、人間がすべきことはすべからく人格を磨く事に尽きる。よって、知ある者は仁たらんと精進するとなる。



1、君子の視点

立派な官僚と言う君子の視点で見ると、人民はあまり貧しくしても反乱を起こすし、あまり富ませても反乱を起こす。だから、ほどほどにせよという教えとなる。そして、貴賤で人を判断するのではなく、仁なる人を1等、知ある人を2等として雇いなさいという事だ。理由は貴賤で人を判断すると裏切られる事が多く、結局は痛い目を見るからだ。



【参考】

1、欲が焦がす例を紹介すると、まずは因果応報で、具体的には敵を作りしっぺ返しを受ける。これだけでも大変だが、運よくしっぺ返しを受けなくてもお天道様は見ているもので、大概は病気になる。欲はストレスの裏返しで切っても切り離せない。欲深いければ、それだけストレスに溢れた生活を送る事になる。しかし、ストレスは万病のもとだ。欲が強ければ比例してストレスも強くなるから、それだけ病気になりやすいのは道理。幾らお金を稼いでも、病気になってしまっては片手落ちと考えてはどうか?自分の欲をコントロールする事は、健やかに生きる上でとても大切と思う。


2、学而編の15番との兼ね合いがあると思われる。

学而編15番


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